相手を崩すところで、自分らしさ"違い"を見せていきたい

1年前、重傷を負って戦線を離脱した猶本光選手が、ついに復帰を果たした。その舞台は運命的にも怪我を負った同じピッチ。準決勝という重要な一戦で、チームは大勝を収め、猶本選手にとって最高の復帰戦となった。


「この1年間、サッカーから離れるのは選手生活で初めての経験だった」と振り返る。しかし、この空白期間は決して無駄ではなかった。徹底的なリハビリに励む中で、自身の身体と向き合い、新たな発見を重ねてきた。「トレーニング方法や体の使い方など、今まで知らなかったことを学べた。これは今後の選手生活にとって、本当に貴重な1年になった」


リハビリ期間中、最大の支えとなったのは同じくリハビリに取り組んでいた安藤選手の存在だ。「毎日のきつい練習メニューを、2人で励まし合いながらこなした。1人だったら、ここまで続けられなかったかもしれない」と、共に戦った仲間への感謝を口にする。


チームとの合流は2025年に入ってからわずか2週間。短い準備期間ながらも、自身のパフォーマンスには手応えを感じているようだ。 「かなりスペースがあったんで。あとは高橋選手がガンガン走ってくれるので、ほんとに無理だけはするなって言われながら入ってまでも、いざ1対1になったら仕掛けたくなっちゃいました」と、試合中の状況を語る。


1対1のシチュエーションについては、「リハビリで結構1対1をずっとやってたので、すっと入れましたね」と、リハビリの成果が出ていることを示唆する。また、高橋選手の動きについても「彼女がすごい走ってくれるのもずっと見てたし、そこらへんに出しとけばマイボールにしてくれるので、もうすごいありがたかったです」と感謝の言葉を述べている。


「今30歳で、ベテランって言われる年齢になってくると、やっぱフィジカル的に落ちるっていう世間的ってか一般的な印象はあると思うんですけど、自分自身はまだそこも伸ばしていきつつ、選手としてまだ成長できるんだなっていうのをこの1年向き合えたことで分かったので、逆に今後これからの自分の成長が楽しみだなって今は思ってます」と、年齢による衰えではなく、成長への意欲を語っている。


復帰戦での起用は、本人にとっても予想外だった。「点差が開いていたから、チャンスをもらえた」と謙虚に語る猶本。監督は彼女の状態を考慮し、慎重に起用を判断したという。「監督は私が復帰して間もないことを考えて、フィジカルな場面での起用を控えめにしてくれた。その配慮は理解できる」


今後の目標について、猶本は明確なビジョンを持つ。「接戦でも自分らしさを出して、相手のディフェンスラインを崩す役割を果たしたい。怪我する前に取り組んでいたシュートの部分にも、また挑戦していく」。この復帰戦は、単なるリハビリの終わりではない。更なる高みを目指す、新たな挑戦の始まりだ。


「この試合で、嫌な思い出を良い思い出に変えられた」と語る猶本選手。その表情からは、充実感と共に、これからのサッカー人生への期待が感じられた。1年間のブランクを経て、選手としての新たな可能性を見出した。ピッチ上での彼女の新たな挑戦が、いま始まろうとしている。