2025年8月24日(日)に行われた2025/26 SOMPO WEリーグ 第3節、浦和レッズレディースは敵地・味の素フィールド西が丘にて日テレ・東京ヴェルディベレーザを1-0で下した。試合後、堀孝史監督はチームの成長を実感できる現在地と、綿密な戦略、柔軟な選手起用、そして選手への深い信頼を感じさせる明確なビジョンについて詳細に語った。
チームの確かな成長とパフォーマンス
堀監督は、昨シーズンのチャンピオンチームであるベレーザを相手に、チームが「少しずつ成長している」と手応えを感じていると述べた。90分を通して選手たちが「リスペクトはするけれど、し過ぎないで戦いに行く」という姿勢を存分に発揮してくれたことに言及し、感謝の意を表した。特に評価したのは、「後半は体力が維持され、守備の形を保つことに関して非常に良くできていた」点だ。また、「非常に良く守れていた」としながらも、そこから先の攻撃への転換が「少し課題になった」と冷静に分析した。
チームの自信の源泉として、アメリカ遠征での経験を挙げた。「パワーのあるチームと対戦することで自分たちの力をつけよう」という「チャレンジ」が、「選手たちの自信につながった」と監督は見ている。そこで「逃げるのではなく、自分たちが奪いに行くことに、今シーズンはトライしようとしている」とし、選手たちがそれを「愚直にやってくれている結果」が現在のパフォーマンスにつながっていると語った。今日の勝利については、「特に前半の選手たちの強い気持ちや勢い」、そして「ハイプレス」にいけた成果だと評価し、選手たちを称賛した。
戦術的アプローチとゲームプラン
試合中の戦術について、堀監督はハーフタイムの時点で、相手が選手交代を行い「おそらく4バックにしてくるのではないか」という情報を基に、選手たちと対応策を話し合っていたことを明かした。カウンターを狙うことに関しては、前半が相手3バック、後半が4バックという状況で、その判断について、自分たちで「もう一回しっかりボールを持つことも必要なのではないか」という課題も認識している。実際、カウンターを狙ったところで奪い返され、相手の残っている選手にボールが渡ってしまう場面もあったとのことだ。
後半の立ち上がりについては、「前半以上に前から圧力をかける」という明確なプランがあったと説明している。監督は「時間帯や場所によって、自分たちもハイプレスをかけようと伝えていた」としつつも、最も重要視したのは「前だけがプレッシャーに行くのではなく、チームとしてしっかり合わせる」、つまりコンパクトに保つことだと強調した。前半リードしていたこともあり、選手たちにはその勢いを継続させることを求めていた。
選手起用と育成哲学
堀監督は、個々の選手の成長とチームの多様性を重視する育成哲学を持っている。その基本は、「どの選手にも様々なポジションを試してもらう」という方針だ。これにより「選手の幅が広がる」だけでなく、「チームとしての戦い方、相手によってということも生まれてくるのではないか」という「試みを今シーズンはやっている」と述べた。監督自身も「コーチングスタッフ、自分たちのほうでもそういうチャレンジをしていこう」と語り、選手と共に成長する姿勢を見せている。
具体的な選手起用としては、高橋はな選手を「右サイドバックで起用」したことを挙げた。この狙いは、「守ることと、攻撃で少し落ち着きが出るのではないか」というものだった。交代となった櫻井まどか選手や丹野凜々香選手は「非常によく頑張っていたが、その分疲弊していたと思う」ため、交代を考慮したと説明している。新加入の外国人選手、エスタ マイ キス選手とタンチュリエ ローリー選手については、合流間もない中で「難しい時間帯に入って、本当に仕事をしてくれた」と高く評価した。彼女たちがミーティングや練習で「意欲的に理解しようとしてくれたり、身体を動かすことをやってくれたりしている」と述べ、チームへの順応性の高さに助けられたと語った。
また、左利きの丹野凜々香選手を「右サイドで起用」した狙いについても言及した。丹野選手は「気持ちの強い選手で、チームのために走ったり、戦ったりすることができる選手」であり、今日の試合では「右で使うことのほうがいいポイントになるのではないか」という判断だったという。また、監督は今後左サイドでの起用もありうると示唆した。試合終盤に若手選手を投入したことについても触れ、前半から戦って「疲弊していた」選手との交代であり、「チームのために戦ってもらおうと思っていた」とした。
選手への揺るぎない信頼
堀監督の選手たちへの信頼は非常に厚い。「信頼という意味では、全員の選手がやってくれると信頼している」と語り、「それがどれくらい表現できるかは別だが、どの選手にも期待している」と強調した。この言葉は、選手個々の能力を信じ、与えられた役割を最大限に果たしてくれることへの期待感の表れであり、チームの一体感を育む基盤となっている。
対戦相手への意識
昨シーズン、レッズレディースを率いた楠瀬直木監督と、中心選手だった塩越柚歩選手が東京NB側にいることについては、「それも含めてのチャンピオンチームで、それに向かっていこうという話はした」と述べ、特別な感情に流されることなく、あくまでも王者への挑戦として試合に臨んだことを示した。
堀監督の言葉からは、選手たちへの深い信頼を基盤としながら、戦術的な成長と個々の選手の可能性を最大限に引き出そうとする明確なビジョンが読み取れる。チームの確実な成長と、それを支える監督の揺るぎない哲学が浦和レッズレディースの今後の飛躍を予感させた。
取材:JunkoSato/SportsPressJP
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