J1の名門相手に衝撃のジャイアントキリング

2025年6月11日に行われたサッカー天皇杯2回戦、JFLのラインメール青森とJ1の横浜F・マリノスの試合は、ラインメール青森が2対0で勝利し、3回戦進出を決めた。この試合は、3つ下のカテゴリーに属するチームが格上のチームを破る衝撃的な「ジャイアントキリング」となった。

試合会場は横浜F・マリノスのホームであるニッパツ三ツ沢球技場。過去に天皇杯を7度制覇した実績を持つ名門が、今シーズンはJ1リーグで最下位に沈んでいる一方、対照的にラインメール青森はJFLで11試合を終えて7勝0敗4引き分けでリーグ首位に立ち勢いがあった。ラインメール青森は天皇杯の青森県代表決定戦でJ3のヴァンラーレ八戸を破り、1回戦では北海道代表チームに5対0で快勝するなど、好調を維持。また、リーグ戦での失点がわずか「3」という鉄壁の守りも特徴だ。

 

 試合序盤から横浜F・マリノスが攻勢をかけ、多くのチャンスを作り出したが、ラインメール青森のゴールキーパー(GK)廣末陸の好セーブに阻まれ、なかなか得点を挙げることができなかった。廣末は青森山田高校出身で、チーム5年目、JFLで4シーズン連続ゴールを決めているGKだ。

均衡が破れたのは前半35分、ラインメール青森が相手のファウルによりペナルティキック(PK)を獲得した場面だ。このPKをGK廣末が自ら冷静にゴール右隅に決め、ラインメール青森が先制点を挙げた。さらに、前半のアディショナルタイム(45+1分)にも、GK廣末のロングキックが起点となり、MF佐久間駿希が右サイドでボールを受け、グラウンダーのクロスを入れると、FWルイス・フェルナンドがこれを押し込み、ラインメール青森が2点目を奪い、前半を2-0で折り返した。


後半に入ると、横浜F・マリノスは3人の選手を交代し攻撃を強化した。しかし、ラインメール青森の守備は堅く、横浜F・マリノスは決定機を作ることができず、シュートチャンスも限られた。ラインメール青森はGK廣末を中心に、相手の猛攻をしのぎ切り、そのまま2対0で試合を終え、3回戦進出を決めた。 


試合後、横浜F・マリノスのサポーターからはブーイングが起こり、チームの現状に対する不満が露わになった。横浜F・マリノスの監督は、チャンスをものにできなかったこと、そして相手に得点を与えてしまったことが悔しい結果につながったと述べた。ブーイングについては、常に素晴らしい応援をしてくれるファンに対してこのような結果を見せてしまったら「当たり前の声だ」と受け止めているとした。監督は、日本代表期間で時間があった中での準備期間についても、「時間がないことは言い訳にならない」と強調し、「チーム全体のその入り方」が結果を招いたと語った。チャンスは作りながらもゴールを奪えなかった点も、時間不足とは全く関係ないと言い切った。 


一方、歴史的な勝利を収めたラインメール青森の選手たちは喜びを語った。特にGK廣末は、自身のPK成功と、チームの守備に自信を持って臨んだことを強調した。ハーフタイムには、GK廣末はチームが慌てる場面はなかったとし、守備面での大きな修正は不要と判断、むしろ「もう1点取りたい」という気持ちで攻撃面での確認を行ったことを明かした。自分たちができることを試したかったとし、相手の力が非常に強いことを認めつつも、選手たちが「やれること」をやってきた結果だと語った。 


 取材:AtsuhikoNakai/SportsPressJP