藤枝順心が決勝戦を制し、見事3連覇を達成した。試合後の会見では、中村翔監督がこの偉業を振り返りながら、選手たちの成長や今後の展望について語った。その言葉からは、チームの強さの本質が見て取れる。
試合を振り返り、中村監督は「今日の試合は完全優勝だった」と自信を見せた。試合中、ブラスバンドの音が大きく、ピッチに声が届きにくい状況だったが、選手たちは普段から積み重ねてきたものを活かし、監督の指示がなくても互いにコミュニケーションを取りながらプレーした。この積み上げた力が勝利の鍵だったと語る。相手チームが試合中に配置を変えてきた際にも、チームは柔軟に戦術を修正し、ボールを保持して試合をコントロールすることに成功した。ハーフタイムでの修正や試合中の対応が的確に行われたことで、最終的にゲームを掌握することができたという。
3連覇という偉業を達成したことについて、監督は「この子たちならやれると思っていた」と選手への信頼を示した。試合前のミーティングはほとんど選手に任せ、自分たちのリズムでプレーする環境を整えたと明かした。選手の特徴については、昨年のメンバーと比べて目立つ選手は少ないかもしれないが、味方を引き立て、補う力が他チームよりも優れていると評価した。この能力が、決勝での5-0という圧倒的な勝利につながったと分析する。
試合序盤に得点を奪えたことが流れを作る上で非常に重要だったと監督は話した。20分以内に1点か2点を取れれば理想的だが、たとえ0-0でも想定内の展開だったという。しかし、セットプレーから得点を奪えたことで試合の流れを掴むことができた。キッカーとしての役割を担える選手が多く、どの選手が出ても高精度のキックを放つことができる環境を整えてきたことが、セットプレーの強さに直結していると語った。流れが悪いときでもセットプレーからチャンスを作れるチーム作りを徹底してきた成果が、この試合で明らかになった。
相手チームについても中村監督は事前に詳細に分析していた。ボールをよく動かしながら特定のスペースを狙ってくる傾向があることを把握しており、9番の選手を起点とした攻撃や縦パスを防ぐための準備を徹底していた。その結果、相手の攻撃を防ぎつつカウンターで得点につなげるという理想的な展開を作ることができた。
3連覇を果たしたものの、監督は静岡の枠が減る可能性などの外的要因も視野に入れ、改めて勝ち負けだけにこだわらない姿勢を強調した。勝ち負けはあるが、それ自体に一喜一憂するのではなく、そこから成長につなげることが大事だと話した。負けることに意味がないとは思わない。勝利でも敗北でも、そこにある課題を見出し、解決策を考えることが重要だと考えている。監督自身も、いずれチームが負ける時が来るだろうと想定している。その時にどう対応し、再び成長の道を歩めるかが鍵になるという。
今シーズン、ある選手をセンターバックからセンターフォワードにコンバートした決断が、チームの大きな転機となった。彼女のヘディングの強さは年代トップクラスであり、その特長を最大限に活かす形でポジションを変えたことが功を奏したという。センターバックとして調子を上げられなかったが、フォワードとして抜群の活躍を見せ、チームに新たな可能性をもたらした。
中村監督は日々のトレーニングにおいて、「玉際」という抽象的な表現ではなく、具体的に何をすべきかを選手に考えさせることを重視している。攻守の切り替えや判断力は特別な練習では伸びない。試合や練習の中で選手たちと会話し、どの選択肢が最適だったかを考えさせるプロセスが成長につながると語った。特別な練習よりも、日々の積み重ねがすべてを決めると考えている。
2年連続での2冠も達成したが、監督自身はその成果を過度に意識していないという。インターハイや選手権の優勝は通過点であり、最も重要なのは選手たちがどのように成長するかだという考えを明確にした。優勝という結果に甘んじるのではなく、選手一人ひとりの成長を最優先に考える指導方針が、結果的にチームの強さを引き出している。
選手たちが最も成長した点として、ストイックに練習に取り組む姿勢を挙げた。練習中のプレーやポジショニングへのこだわりが増し、チームメイトを引き立てる力が一段と強まった。今シーズンは久々に負けた試合もあったが、それすらも選手たちにとって良い経験になった。負けの中で見つけた改善点を修正し、次に活かす姿勢が選手たちの成長を促している。
藤枝順心監督の会見からは、特別な才能や偶然ではなく、選手たちの努力と組織的なアプローチによって3連覇を成し遂げたことが浮かび上がる。勝ち負けを超えて選手たちの成長を重視し、日々の積み重ねを大切にする姿勢が、チームの未来をさらに明るく照らしている。
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