勝つために必要なのは強い気持ち

日本サッカー協会(JFA)は、なでしこジャパン(日本女子代表)の新監督としてニルス・ニールセン氏の就任を発表した。記者会見で、JFA会長の宮本恒靖氏は、女子サッカーの拡大というマニフェストを掲げ、なでしこジャパンが世界のトップに返り咲くことの重要性を強調した。宮本会長は、昨年のW杯や今年のオリンピックでのなでしこジャパンの戦いを評価しながらも、さらなる高みを目指すためにニールセン監督を選出したと説明した。選定にあたっては、国際試合や大会の経験、日本の女子サッカーへの知識、日本人選手の理解、そして今後の日本のサッカーをイメージできるかといった点を重視したという。

JFA女子委員長の佐々木則夫氏は、前任の池田監督の功績を評価しつつ、チームのさらなる飛躍とベスト8の壁を破ってファイナルに進むという目標達成の必要性を説いた。佐々木氏は、その実現のために日本人指導者だけでなく海外にも目を向け、様々なヒアリングやミーティングを重ねてきたことを明かした。ニールセン監督については、人間性が豊かで、現在のなでしこジャパンを熟知し課題を把握している点を高く評価。ヨーロッパで面会した際の人柄に深く感銘を受けたと語った。


ニールセン監督は冒頭の挨拶で、なでしこジャパンの一員となることへの尊敬の念を表明。グリーンランドの小さな村で生まれ、その後デンマークに移住したという自身の生い立ちに触れながら、日本に来てからその素晴らしさに感銘を受けたことを語った。日本の女子サッカーについては、2010年以降の目覚ましい発展に刺激を受け、そのプレースタイルが世界中に影響を与えたと高く評価。今回の監督就任については、光栄であると同時に、これまでの歴代監督が築き上げてきた基盤の上にさらに積み上げるチャンスを得たと喜びを表明した。


なでしこジャパンが常に優勝を狙えるチームであり、その能力も十分にあると述べたニールセン監督は、自身も優勝トロフィーを掲げることを目指すと宣言。その実現には、チーム全体の力を合わせることが必要であり、JFAのサポートとクラブチームとの良好な関係、メディア、ファン、サポーターの協力が不可欠だと強調した。


質疑応答では、これまでのなでしこジャパンの印象について、現在のチームも過去と同様に高いスキルレベルを持ち、技術的にもスピードもあると評価。その強みをさらに伸ばし、大きな大会で優勝できるポテンシャルがあるとしながらも、さらなる改善の必要性を指摘した。具体的な戦術については、今後テクニカルスタッフと議論していく方針を示した。


世界一になるために最も重要なこととして、強い気持ち、勇気、自信が不可欠だと述べ、チームとスタッフが一体となって目標を達成することの重要性を説いた。マンチェスター・シティでの経験を例に挙げ、エンパワーメントによって個々の能力を最大限に引き出すことが重要だと強調した。


マンチェスター・シティで共に過ごした長谷川唯選手については、タックルせずに相手からボールを奪う能力を高く評価。共に仕事をしたいと考えていたことを明かした。なでしことジャパンの課題としては、勇気を持って重要な瞬間に挑戦すること、ボールを持っている時も持っていない時も戦術的な改善が必要だと指摘。自分からイニシアチブを取りに行くことの重要性を説き、オリンピックのスペイン戦のようなパフォーマンスを常に発揮できるようにしたいと語った。


日本代表監督への就任については、マンチェスター・シティ時代から日本の選手に興味を持っており、自身のプレースタイルと合致すると感じていたことを説明。コーチとして復帰したいという思いもあり、JFAが外国人監督も候補に入れていると聞いてチャンスを感じたという。

指導者としての信念については、安全な環境を作り、お互いの考えを共有できる関係を築くことを重視。チームとして信頼関係を築き、目標を達成するためにはハードワークが必要だと説いた。過去のことは関係なく、今、目標に向かって進むことが重要だと強調した。


自身の指導者としての強みについては、ポジティブな人間であり、選手の可能性を最大限に引き出すことを重視すると説明。選手のスタッツだけでなく人間性を重視し、選手一人一人とよく話し、チームとしての一体感を醸成することを心がけていると語った。また、選手には率直に意見を伝え、成長を促すことを重視するとした。


理想の選手像については、最高のレベルに達したいという強い気持ちを持つ選手を評価。一つのチームに様々なタイプの選手が必要であり、それぞれのスキルを最大限に発揮できる選手を選ぶと説明。リーダーシップ、理解力、パスサッカーへの理解も重要な要素として挙げた。


コーチングスタッフについては、JFAに日本人のコーチングスタッフを揃えてもらうようお願いしており、日本の文化や選手を理解している人材が必要だと説明。海外でプレーする選手も多いため、ロジスティック面も考慮し、JFAが推薦する有能なスタッフとの連携に期待を示した。


指導者への転身のきっかけとなった怪我の経験については、子供の頃からの夢を絶たれ、最初は受け入れられなかったことを告白。しかし、指導者コースに参加したことで自身がコーチに向いていることに気づき、その経験をポジティブに捉えることができるようになったと振り返った。


今後のスケジュールについて、1月に日本に戻りスタッフと共に試合を視察する予定を明かした。シービリーブスカップに向けては、準備のできている選手を選び、欧州でプレーする選手もスカウトする方針を示した。アメリカのリーグが始まっていないため、今回はアメリカの選手は見送るが、今後選考する可能性も示唆した。


外国人監督の起用については、JFAが外国人監督を探しているという情報が世界中に広がり、多くのコンタクトがあったことが明かされた。なでしこジャパンが世界一になることは日本の女子サッカーを拡大する上で重要であり、高いレベルの指導者を必要としていたという背景が説明された。


監督との契約や関係について、佐々木委員長は、まずはワールドカップで結果を出し、その後のオリンピックに向けても期待を示した。ニールセン監督の人間性を評価し、選手を鼓舞する力に期待を寄せた。監督はヨーロッパに拠点を置くが、日本にも定期的に来て視察を行う体制が整えられることが説明された。


取材:石田達也