最強ではないけど、最終的に最高のチームになった

高知ユナイテッドがJ3への入会を決めた12月7日、吉本岳史監督は喜びと安堵の表情を浮かべながら、試合を振り返り、来シーズンへの意気込みを語った。

「たくさんの方々に支えられて高知県初のJリーグチームというのが誕生した。単純にその気持ちでいっぱい」と感謝の言葉を述べた。シーズン終盤は苦しい試合が続いたが、この入れ替え戦2試合は非常にたくましい内容だったと評価した。試合終了の瞬間については「しびれる試合をものにしたなっていう部分と、これまで苦しい思いをしてきた選手やサポーターにいい報告ができるなと思った」と振り返り、「みんなが泣くんで、僕は泣けなかったっすね」と笑顔を見せた。


選手たちには“やったな”と“ありがとう”と感謝を伝えたという。チームについては、「高知県初っていう部分で、一番最初に歴史の名を残したチーム。選手がいて僕の仕事が成り立つし、選手に支えられた1年だった。最強ではないけど、最終的に最高のチームになった」と、選手への感謝を繰り返した。


地元高知への思いを聞かれると、「地元だからとかっていうことはあんまり意識はしてない」としつつも、「途中からたくさんの方々に応援に来てもらって、その思いを背負って今日立てた。その皆さんにいい報告ができるってことは非常に嬉しい」と語った。


さらにサポーターに向けて、「今シーズン難しいところから徐々に観客数も増えて、応援してくれる方々も増えた。だからこそ、そういった方々にもっと感動やワクワクドキドキを届けられるようなチームを作りたい。高知らしい、高知の血の通ったチームを作っていきたい。まだまだ我々は成長しなきゃいけないチームなんで、もっとたくさんの方々に応援してほしい」と、さらなる飛躍を誓った。ニッパツ三ツ沢球技場は、吉本監督がかつて所属していた横浜FCの本拠地でもある。この場所でJ3入りを決めたことについては、「アウェイになるということで、YSさんのサポーター、この雰囲気に飲まれるのかなと選手に話していた。ただ、最高のピッチだから逆に楽しまなきゃ損だよねと。こういう機会はなかなかないから、自分たちのストロングをどれだけ引き出せるかを考えて送り出したら、選手が躍動してくれた」と振り返った。

また、「ニッパツは最高。観客と距離が近いし、我々が言ってる言葉も伝えられる。一体感のあるスタジアムで、こういう記念のある試合ができたことは幸せ」と、スタジアムの雰囲気についても語った。


シーズン終盤、出場機会の少なかった新谷選手の先制点については、「自信持って送り出した。香川戦ではほぼ出ていなかったけど、彼の良さであるクロスからのシュートを期待して送り出した。その結果が結びついてよかった」と起用理由と喜びを語った。



試合後の過ごし方について聞かれると、「本当に今年1年いろんなものを巡らせて、頭を使ったり、選手には厳しいことを伝えたり、普段と違うトレーニングをしたりした。しっかり休んで次に向けて準備したい。まずはしっかり休みたい」とオフシーズンを見据えた。

高知県の子どもたちへのメッセージを求められると、「それまでに多くの方々に支えられて高知ユナイテッドができた。その思いを紡いでいくチームにしていかなきゃいけない。選手がそれを伝え、我々がピッチでハッスルすることで、サッカーの文化を作っていきたい。そういう思いでやってきたので、子どもたちに夢を与えられるいい機会になったと思う。だからこそ、Jリーグチームとして恥じないチーム、人間力をつけていく必要がある」と語った。


この試合、監督はガンバ大阪戦で着用した勝負服のベージュのスーツで臨んだ。このスーツについては、「twitterとかで書かれていたんで、僕のラッキーカラーがゴールドだった。それでこのベージュのスーツがゴールドに見えるのは素敵だなと思って、この2試合着てきた」と明かした。また、「twitter上では監督が裸っぽく見えるとかって書かれていたけど、裸一貫というか、自分の見せたいサッカーを思い切って見せられたと思う」とユーモアを交えて語った。


4年間、苦しい時期を過ごした選手たちについては、「若いチームだったんで本当に苦しかったと思う。だからこそ失敗を成功にした選手をたたえてあげたいし、まだまだ彼らのサッカー人生は続く。この機会をしっかり自分なりに反省して、いいサッカー選手になってほしい。4連敗は本当に苦しかったけど、この苦しい試合をものにできた」と選手たちをねぎらった。


最後に、「大きすぎる炎になった。この炎を絶やさないように高知県でさらに盛り上がっていきたい。今シーズン、社長も変わり新たな0からのスタートになった。0から1を作るためにたくさんのスタッフに支えられたことに本当に感謝する」と述べ、会見を締めくくった。


高知県初のJリーグチームの船出は、監督の情熱と周囲の支えによって最高の形でスタートを切った。

取材文:Nishikawa Tomoyuki / SportsPressJP

Photo by Suzuki Hiroshige / SportsPressJP