三浦知良「キング・カズ」。57歳を超えてなお現役を貫くその姿は多くの人々の心を揺さぶり続けている。彼の魅力はどこにあるのか。それは、年月を重ねても色褪せることのない情熱と飽くなき向上心、揺るぎないプロ意識、そしてファンへの惜しみない愛情にあると言えるだろう。
カズが魅せるのは、単なるサッカーの技術だけではない。10代の頃から持ち続けている「もっと上手くなりたい」という純粋な向上心が、今も彼の原動力となっている。試合に出たい、ゴールを決めたい―その飾り気のない思いは、半世紀以上の時を経ても変わることがない。
その情熱を支えているのが、徹底した自己管理だ。食事、睡眠、トレーニング、すべてにおいて妥協を許さない姿勢は、多くのアスリートの模範となっている。プロとしての矜持は、57歳という年齢を感じさせない軽やかな動きと、フィジカルバトルにも臆することのない強靭な肉体に表れている。
JFL鈴鹿への移籍後も、カズは常に前を向いている。与えられた役割を全うし、チームの勝利のために献身的に動く姿からは、まさにプロフェッショナルの真髄を見る思いがする。時にチームメイトが彼の動きを十分に活かしきれない場面があっても、決して諦めることなく、次の展開を探り続ける。
カズの魅力はピッチ上だけにとどまらない。ファンへの対応も、彼の魅力を語る上で欠かせない要素だ。試合後には時間の許す限りファンのもとへ足を運び、一人一人と丁寧に触れ合う。その姿勢はホームでもアウェーでも変わることがない。ファンを大切にするその姿は、「キング・カズ」の愛称にふさわしい、まさに日本サッカー界の象徴と言えるだろう。
◆強いメンタリティーがなければ、真の力を発揮することはできない
カズが体現するのは、年齢を重ねても夢を追い続けることの素晴らしさだ。技術や戦術の重要性はもちろん、それと同等に精神力の大切さを説く彼の言葉には重みがある。どんなに優れた技術を持っていても、強いメンタリティーがなければ、真の力を発揮することはできない。グリットやレジリエンス―困難に立ち向かい、逆境を乗り越える力の大切さを、カズは身を以て示している。
そして何より、カズの魅力は「サッカーへの愛」そのものにある。毎日の基礎練習を大切にし、ボールを止める、蹴るという基本動作を今でも欠かさない。その姿には、サッカーに対する深い敬意と感謝が込められている。様々な国でプレーし、多くの人々と出会い、数えきれない経験を重ねてきた彼だからこそ、サッカーという競技の本質的な価値を知っているのだ。
三浦知良という選手の存在は、スポーツの持つ力、そして人間の可能性の大きさを私たちに教えてくれる。年齢という壁を超え、常に挑戦者であり続ける姿は、多くの人々の心に勇気と希望を与えている。彼の生き様は、サッカーの枠を超えて、人生そのものの指標となっている。
Photo:Suzuki Hiroshige/SportsPressJP
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