JFL昇格への道のり、最後の関門である入れ替え戦が11月30日に三重交通Gスポーツの杜鈴鹿で行われ、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)準優勝のVONDS市原FC(V市原)が、JFL15位のアトレチコ鈴鹿クラブ(鈴鹿)を延長戦の末に1対0で破り、ついに悲願のJFL初昇格を掴み取った。V市原は3年連続で挑んだ「地域CL」を突破する強靭なリアリズムを見せつけた一方、ボール支配で優位に立ちながらも崩しきれなかった鈴鹿は、元日本代表FW三浦知良を投入する総攻撃も実らず、地域リーグ(東海社会人リーグ)への降格となった。
延長戦にもつれ込んだ運命の一戦は、延長前半8分(98分)にV市原のFW加藤勇司ベサーナの決勝ゴールで決着がついた。V市原の向山聖也監督は、3年連続で準優勝という「なかなかない記録」を作り、過去2年間の悔しさや、クラブ内、地域の期待を背負った中での戦いだったと吐露した。
「ゴールをこじ開けることができて良かった」と決勝点を喜んだ向山監督は、鈴鹿の守備の硬さから「コーナーキックが増えたのが最終的に繋がった」と、セットプレーの数を増やす意識が功を奏したことを示唆した。また、「得点を取った後も何かを変えたわけではなくて、ずっと相手陣地でプレーをしようっていうことはチームに伝えた」と、常に攻める姿勢を貫いたと説明した。監督は、この勝利は「ファンサポーターの方も本当に昇格を待ち続けてたた」中、「この遠いところまで、たくさんのサポーターの方に来ていただいて、昇格を共有できた」喜びを語り、「選手が本当に1試合1試合通じて成長した結果だ」と選手たちを称賛した。
一方、敗れた鈴鹿のFW三浦知良選手は、この結果について「僕もいろんな経験をしてきた中で、本当に挫折感を味わったこともあり、喜びを味わったこともあり、その繰り返しかなと思う」と振り返った。三浦選手は、今日の試合が持つ意味を全員が分かっていたと話し、「鈴鹿の歴史を作ってきてくれた先人たち、鈴鹿のサポートをずっと支え続けてきてくれた地元企業の人も含め、サポーター、そうした人たちの思いや気持ちを感じながら、なんとか今日は、残留したかった」と、悔しさを滲ませた。自身の来季について「鈴鹿との契約は1月31日まで」であり、「まだこの先のことについては何も話合ってもいない」と現状を語った。さらに、「僕が続けたいと言っても続けられる、僕が決めれることでもない」ため、「まず最初にそのオファーをいただけるかどうかという問題」と冷静に述べ、「クラブの考え方は大事になってくる」との見解を示した。
今シーズンについては「怪我が多い一年だった」と認め、「ほとんど、1月から5月ぐらいまでチームの試合に関わることできなかったんで、1年として本当に力になれなかったのは非常に悔しく思う」と心境を明かした。また、シーズンを通して「降格するチームの雰囲気、降格するチームの負け方」を感じ、「そこに行ってはいけない」と言い続けてきたが、「あれを止められなかったのは反省点」と分析した。しかし、チームの終盤の戦い方については「この4戦の戦い方、スピリットみたいなもの、そういったものをこの4試合のような戦い方をしていれば多分落ちなかったと思う」と述べ、結果は出なかったが「内容で言ったら悪かった時の降格するチームの雰囲気だった時より、もう全然この何ヶ月間は良くなっていた」と述べた。三浦は「これを次の地域リーグに行った時に、この戦い方のスピリットをベースにやっていかなきゃいけない」と、クラブの再生への提言を示した。
鈴鹿の山本富士雄監督は、敗戦の責任を自身が負うとし、「うちの一瞬の隙、相手の素晴らしいプレー」で失点したと分析した。山本監督は、この試合の難しさは「一発勝負というような捉え方ではなくて、やはりリーグ戦を1試合、1試合に集中してというような取り組みで1年間来てたので、特にこの一発勝負というより、このゲームに勝たなければ昇格をしっかりつけられるゲーム」であることだと説明した。今シーズンの不振の原因については、「選手を思ったように私が力を上げられなかったということと、チームのしっかりしたスタイルを構築できなかった」点にあるとした。
V市原にとってJFL昇格は2023年、2024年の入れ替え戦での敗戦を経て、三度目の正直での達成となった。JFL初昇格は12月4日のJFL理事会で正式に承認される見通しだ。鈴鹿は2018年以来の地域リーグ降格となった。
取材:HiroshigeSuzuki/SportsPressJP
0コメント