菰方・鈴木ペア、準決勝進出

2025年11月21日(金)東京デフリンピックのテニス女子ダブルス(有明テニスの森)で、日本代表の菰方里菜・鈴木梨子ペアが強豪ロシアのペアを破って準決勝に進出した。

■ 大舞台「コロシアム」から見えた景色

鈴木選手は、センターコートである“コロシアム”に立った瞬間を振り返った。「怖さは意外となくて。コロシアムにいる人も、その環境も、自分の味方だと思えたんです。悪いイメージや感覚はありませんでした」世界大会の独特の雰囲気を“楽しめた”ことが、伸びやかなプレーにつながったようだ。

一方、今回ダブルスが初めての菰方選手は、「初戦から相手がすごく強い選手で、不安もありましたし、押される場面もあって、引いてしまいそうになる時もありました」 しかし、観客席からの応援や、コーチの表情・ジェスチャーが視界に入るたびに気持ちが支えられたという。「弱気にならないようにしよう、と。2人でしっかりダブルスができたと思います」

■ 声が届かない中でのコミュニケーション

補聴器を外して戦うデフテニスでは、ダブルスの意思疎通が最大の鍵となる。両選手はポイント間に指文字やジェスチャーを使い、戦術面からメンタル面まで頻繁にコミュニケーションを取った。鈴木選手は、その内容についてこう説明する。「“頑張れ”みたいな気持ちの話もしますし、サーブやリターンの仕方など戦術系の確認もしていました。最後の方は、リナ(菰方)が主体的に“強気で行こう”ってメンタルを支えてくれて」 互いを励まし合い、戦う姿勢を崩さなかったことが勝利の要因になった。


■ 課題と収穫、次戦への手応え

試合を通じて浮かび上がった課題として、戦術の幅と対応力の重要性が挙げられた。

「今回は相手がボレーであまり動いてこなかったんです。でも、次はタイプの違う相手と当たると思うので、そこにしっかり対応していければ勝機はある。2人を信じて頑張りたいです」(鈴木選手) デフリンピックでは、声が届かない分、ペアとの信頼関係が勝敗を大きく左右する。


■ 多種目でのメダルを目指す菰方選手

菰方選手は、シングルス・ダブルス・混合ダブルスの3種目でメダル獲得を目標に掲げて今大会に臨んでいる。視覚とジェスチャーだけを頼りにお互いを支え合うデフテニスの中で、どれだけ自分の戦いを貫けるかが鍵となる。


次の試合でも、ふたりの絆と戦術が光るプレーに期待がかかる。

取材:JunkoSato/SportsPressJP