世界王者を苦しめた「ブラジル人ゴレイロのDNA」

イゴールの情熱が、田淵広史に受け継がれている

フットサル日本代表は、世界王者ブラジル代表との国際親善試合第2戦で2-3と惜敗した。序盤に3点を奪われながらも、終盤には1点差まで詰め寄り、最後まで集中を切らさずに戦い抜いた。その中心にいたのが、守護神・田淵広史だった。

試合後、ブラジル代表のマルコス監督は田淵の印象を聞かれ次のように語った。

「彼は非常に良かった。今日も素晴らしい試合をしていたし、おめでとうと言いたい」。続けて「彼が努力を続けていることを称えたい」とも語り賛辞を送った。田淵の冷静な対応と的確なセービングは、日本のリズムを保ち、ブラジルの攻撃を何度も食い止めた。終盤にはブラジルを本気にさせるほどの拮抗した時間を生み出し、試合を最後まで緊張感あるものにした。


継がれる「ブラジル人ゴレイロの系譜」

マルコス監督は、日本代表のゴレイロ陣についても触れた。「日本にはブラジル人ゴレイロの系譜がある。以前、イゴール選手が何年も代表でプレーしていた」と語る。それは、単なるリスペクトではなく、日本のゴレイロに受け継がれた哲学を見抜いた発言でもあった。日本代表のゴールを長く守り続けたイゴールは、技術だけでなく、フットサルに向き合う姿勢や精神を日本に残した。その情熱は、静かに次の世代へと伝わっている。


田淵は、かつてブラジルで1年間の研修を経験している。その時間の中で、現地のゴレイロたちが持つ考え方や鍛錬の積み重ねを肌で感じ取った。イゴールもまた、その道を通り、日本代表のゴールを長年守ってきた。田淵のプレーには、その流れが自然と表れている。無駄のない動き、味方を支える声、そして最後まで集中を切らさない姿勢。そこには、イゴールが残した“守る者の矜持”が息づいている。


この試合での田淵のパフォーマンスは、個人の努力の成果であると同時に、イゴールをはじめとするブラジル人ゴレイロたちの教えが形になったものでもある。ブラジルで学び、日本で磨かれ、そして世界の舞台で試された。その中で確かに見えたのはどんな状況でも崩れない心の強さだった。“ブラジル人ゴレイロのDNA”は、今も日本代表のゴールに息づいている。


イゴールが注いだ情熱は、田淵広史を通して、確かに次の時代へと受け継がれている。

Photo:HiroshigeSuzuki/SportsPressJP 

TEXT:TomoyukiNishikawa/SportsPressJP