小さいことの積み重ね、細部で差が出た

天皇杯ラウンド16、8月6日(水)にヨドコウ桜スタジアムで行われたFC東京対セレッソ大阪の一戦は、FC東京が2-1で勝利を収めた。厳しい暑さの中での激戦となったこの試合について、両監督が試合後の会見で詳細な分析を語った。


FC東京・松橋監督の分析

松橋監督は今回の勝利について、「両チームにとって非常にタフな環境の中のゲームであった」と厳しいコンディションでの戦いだったことを認めた。しかし「最後やはりしっかりと90分で決着をつけられた」ことを「非常にポジティブな部分だ」と評価した。試合のクオリティについては正直に「この暑さの影響をかなり受けたゲームではあった」と認めながらも、最終的には「小さい成功であったり、小さいことの積み重ね、積み上げ」によって相手に「勝つことができたことが、この結果に結びついた」と分析した。

松橋監督は現在のチーム方針について、常に同じメンバーを固定するのではなく「様々なメンバーリングを組みながら」ゲーム内で想定されるポジションを選手にやってもらう期間であると説明した。この戦略の背景には「誰が出てもしっかりとパフォーマンスを発揮できる」チーム作りがある。試合序盤はなかなかパフォーマンスが出せない部分があったが、途中での修正に選手たちが「いち早く反応してくれた」ため、そこからは良い流れでボールを前進させ、ファイナルサードに入っていくことができたと手応えを語った。

コンディション管理への取り組み

過密日程の中でのコンディション管理について、松橋監督は「いち早く回復してもらい、また全員が選択肢になる」という考えを示した。必ずしも休んだから次に出られるわけではなく、短い期間で「コンディションをしっかり足並みを揃えた中でのチョイスにしていきたい」と今後の方針を語った。


守備面の課題と改善

相手セレッソの攻撃については「セレッソさんの強みの部分をしっかり出されてしまった」と認めつつも、ディフェンスラインで「しっかりと弾き返せた」点は評価できると述べた。ただし、相手の攻撃回数が増えれば失点の可能性も高まるため「しっかり潰し切る」ことが今後の課題だと認識している。試合開始時の守備については「相手の中盤を捕まえられなかった」と感じており、「守備の強度がそこまで高くなかった」ことや、選手が「そこまで体が動かなかった」ことで相手に簡単にポジションを取られてしまった点を反省材料として挙げた。また「役割やろうとすることはもちろん当然あるが、ファジーのポジションをしっかり取れないことによってのそういったエラー」にも繋がったと詳細に分析している。しかし前半の中盤でコーチ陣と連携し、選手に伝達したことで「少しずつ少しずつだが、改善されてペースを握れることはできた」と修正能力を評価した。


攻撃面での課題

攻撃については、特定の選手間の「連携というところはそこまでどうだったかなとは思う」と率直に語った。特に相手のボックスに入っていく際の「ポジションを取るのが遅かったりだとか、止まる時間が多かった」ため、相手に守りやすくさせてしまったと指摘している。選手には「スペースがある中でできることっていうのは多分多くある」はずだが、スペースが限定される中でどう使うかという「工夫」が「さらに向上させるポイント」であると今後の改善点を明確にした。

今後への決意

この季節の試合では「天候や気候やそういうものをやっぱり言い訳にはせず」、「しっかり詰められるものはしっかり詰めていく」意識で準備していきたいと力強く語り、環境に左右されない強いチーム作りへの意欲を示した。



セレッソ大阪・アーサー・パパス監督の敗戦分析

パパス監督はまず「FC東京さんおめでとう」と相手チームを称えた上で、この試合は「勝てる試合だとは思っていた」と勝利への自信を持っていたことを明かした。敗因については「PKのシーンもあったはず」であることと「ディフェンスのところで、しっかりと閉めなきゃいけなかった部分」があったことを指摘。最終的に「試合を決定する部分っていう際の部分で、差が出た試合だった」と勝負どころでの精度の差が敗戦に繋がったと分析した。

前半のパフォーマンス評価

前半については「特に入りはよく」チームが事前にトレーニングしていたことを十分に発揮できたと評価。特に「前半の30分から35分すごく、いい試合だった」と手応えを語った。ただし「正直ハーフに入る寸前、7から8分ぐらい、ちょっと落ちてしまった」という課題も認識しており、試合の流れの中での集中力の維持が課題として浮かび上がった。


後半の失点と決定機逸失

後半の入りも良かったとしながらも、失点シーンについては「守備のところでしっかりと、規律正しく守備ができれば絶対防げた2点だった」と守備の規律不足が決定的な差を生んだと厳しく分析した。攻撃面でも同様の問題を指摘し「ちゃんとしたポジションが取れてれば、絶対こぼれ玉を押し込めたっていうところもある」と決定機を逃したことについて言及。「こういった強い相手と試合やる時は、そういったところの細部で差が出るなと実感している」と強豪相手では細かい部分の精度が勝敗を分けるという認識を示した。


交代選手と規律の重要性

試合途中で投入した選手についても「入った選手も最初はすごく良かった」と評価しつつも、「正しいところにしっかりと入っているか、その規律っていうのがちゃんと出せるか」が重要であったと強調。試合終盤の展開では「2回、3回ぐらいビッグチャンスがあったので、そこをちゃんと押し込めるかどうかっていうところが大事だった」と決定力の重要性を改めて述べ、勝利を逃した悔しさを滲ませた。

両監督ともに、この試合が細部の精度と規律の差で決まったことを認識している。FC東京は途中の修正能力と粘り強さで勝利を掴み、セレッソ大阪は決定的な場面での精度不足が敗戦に繋がった。厳しい暑さの中での激戦は、両チームにとって多くの課題と収穫をもたらす試合となった。


取材:HiroshigeSuzuki/SportsPressJP