ラグビー女子日本代表「サクラフィフティーン」が7月26日、東京・秩父宮ラグビー場でスペイン代表と対戦し、30対19で勝利を収めた。この試合には5,244人の観客が駆けつけ、女子15人制日本代表戦における歴代最多観客数を記録した。
太陽生命ジャパンラグビーチャレンジシリーズとして開催されたこの一戦で、日本はテンポの良いパス回しを武器に試合の主導権を握った。特に長田主将は果敢なキックチャージから自らトライを決めるなど、チームを牽引。日本は合計5トライを奪う快勝劇を演じた。第1戦(北九州)の勝利に続き、日本はスペインに2連勝でシリーズを締めくった。
この試合は8月下旬に開幕するワールドカップ・イングランド大会を前にした国内最終戦。対戦相手のスペインは、本番のワールドカップ1次リーグ第3戦(9月7日)で対戦する相手でもあり、両チームにとって重要な前哨戦となった。
レスリー・マッケンジーHC、課題と手応えを語る
レスリー・マッケンジー ヘッドコーチは、国内でのスペイン戦連勝に喜びを示す一方、ワールドカップに向けた課題を明確にした。
「国内で勝てたことは喜ばしいし、ワールドカップに向けた準備が進んでいる手応えがある」と語り、パフォーマンス自体も素晴らしいものだったと評価。しかし、「次のイタリア戦では今回のミスは許されない。イタリアは手強い相手だ」と気を引き締める。
特に懸念するのは、シンプルなプレーを複雑にしてしまう傾向だ。「チャンスをものにできなかった。選手たちは能力を見せたが、もっとダイレクトにプレーできた場面もあっただろう。この点はレビューして改善する」と、決定力不足と判断の精度向上を課題に挙げた。
ディフェンス面についても言及し、「もう少しダイレクトに行けた部分があった。受け身になってしまったシーンもあったが、最初の10分で見せたような、積極的に当たりに行く姿勢を求めていた」と、守備の甘さを指摘。
一方で、選手たちの状況判断のバランスは高く評価した。「タッチを狙ったキック、ミッドフィールドでのスクラム選択、タップキック。これらは相手のディフェンスの弱みを突く適切な判断だった。コーチボックスから見てもバランスが取れていた」と、戦術的な理解度を称賛した。
最後に、「ホームで2試合できたことは特別な経験であり、選手たちのパフォーマンスは本当に素晴らしい。自分たちのミスからプレッシャーを受ける場面もあったが、やってきたことを正確に出せるようにしたい。自陣ゴール前での不用意なプレーは避け、もっと早い段階で相手を締めたい」と、ワールドカップへの決意を語った。
長田いろは主将、観客への感謝とワールドカップへの決意
長田いろは主将は、国内最終戦でのスペインに対する2連勝を「本当に良かった」と振り返った。
「相手のモメンタムが生まれた時に少し受け身になったが、自分たちの得点力はしっかり準備してきたことが出たと思う。全員のエフォートを誇りに思う」と、チームの奮闘を称えた。
試合中の判断については、「相手がシンビンでモンスタートだったので、スクラムを狙った。フォワードの意見を聞きながら判断した」と、状況に応じた柔軟な対応ができたことを明かした。ラインアウトの練習の成果も実感しており、「練習で出た課題と試合で出る課題が一緒だったので、修正はスムーズになる」と、手応えを感じている。
秩父宮に5000人以上の観客が来場したことについては、「本当に嬉しく思う。女子ラグビーへの興味や認知度が上がっているのを実感している」と、女子ラグビーを取り巻く環境の変化を喜んだ。
試合前に流れたビデオメッセージには「すごくびっくりした」と語り、「お世話になった方々や注目しているクラブチームからのコメントが本当に力になった。皆さんの言葉を胸に、ワールドカップで戦いに行きたい」と、感謝と決意を表明した。
ワールドカップに向けては、「しっかり準備して、桜フィフティーンのラグビーを正確に見せたい」と意気込む。スペインのプレッシャーでパスミスや判断ミスが出たことを認めつつも、「そこは修正していく」と前向きな姿勢を見せた。後半のバックスとフォワードの連携も改善点として挙げた。
最後に、「皆さんの応援が力になる。私たちも皆さんのために結果を残したい。ワールドカップという舞台で自分たちのラグビーを見せて、良い結果を出せるように頑張りたい」と、応援への感謝と決意を改めて語った。
スペイン代表監督、日本の印象とワールドカップへの示唆
スペイン代表監督は、日本との2連戦を終え、日本のプレーを高く評価しつつ、自チームの課題を明確にした。
「日本はボールをよく動かすチームだ。フォワードもバックスもボールを動かし、スクラムハーフもボールを素早く動かしていた」と、日本の展開ラグビーを分析。
敗因については、「最終的にボールを持っている時間が少なかった。ボールを持っていなければ得点できない」と、ポゼッション率の低さを挙げた。特に、「23回のペナルティは非常に多い。前半はラインアウトから質の高いボールが出てこなかった」と、規律とセットプレーの精度が低かったことを悔やんだ。その結果、「日本のディフェンスに対して適切に攻撃できなかった」と語った。
試合終盤の20分はボールを保持し、戦う姿勢を見せたものの、「80分という試合時間を考えると、そこだけでは十分ではなかった」と、継続性の欠如を課題とした。
ワールドカップ前に日本と対戦できたことは、情報収集の面で有益だったと述べた。「各チーム強みは持っているが、実際にプレーで対戦しないと分からないことがある。今回対戦した結果、何に取り組まなければならないかがよりよく分かった」と、収穫を語った。
改めて日本の印象を問われると、「知っていた情報ではあったが、実際、感触として本当に速い展開をするチームだと感じた。ブレイクダウンもディフェンスも非常に強く、ボールの再獲得も強い」と、日本の総合力の高さを評価。さらに、「チームのパフォーマンスが一定で、一貫性がある」と、安定性にも言及した。
最後にファンに向けて、「ワールドカップで日本とイングランドが対戦する時には、ベストなゲームを見せるだろう。試合を見てラグビーを楽しんでもらいたい」とメッセージを送った。
取材:JunkoSato/SportsPressJP
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