サッカー女子日本代表の藤野あおばが、マンチェスター・シティでの初の海外挑戦シーズンを振り返った。決して平坦ではなかった道のりから得た成長と、支えとなった人々の存在について語った。
シーズン序盤は試合に出場していたものの、思うようなプレーができず、自身の良さを発揮するのに苦労した。これまで監督や環境が原因で試合に出られない経験が少なかった藤野にとって、初めての状況だった。特に10月頃、母親がマンチェスターを訪れていた時期には、徐々にベンチに座る時間が長くなった。
海外選手のスピードやフィジカルとの差を痛感し、「どうしたらいいんだろう」と深く悩んだ。しかし、「試合に出たい」「結果を出したい」という強い気持ちは持ち続けた。毎日課題意識を持って練習に取り組み、練習後にはクロスや1対1の個別練習も行った。監督やコーチにも積極的に意見を求め、改善点を確認していった。
日本では自分がプレーしやすい環境や感覚を基準にプレーを選択することが多かったが、海外では自身がどのような選手で、どうプレーしたいのかを周囲に伝える重要性を学んだ。プレーの選択肢として、「まず仕掛ける」ことを第一に考えるようになった。特に以前苦手意識があったクロスへの入り方は、シティで大きく改善できたと実感している。
チームでの自身の強みとして、質の高いクロス供給を挙げた。高さとヘディングが強いセンターフォワードがいるため、「クロスさえ上げれば」という意識があった。また、周囲の状況を見て判断し、チームメイトが求める動きを汲み取ってプレーできる部分、そして守備における細かい献身性も強みだと語った。
結果が出ない時期、目に見える成果がない時こそ、地道に「できていること」や「成長しているところ」を見つけるよう意識した。この初めて直面した大きな壁の時期、これまでメンタル面で深く相談することが少なかった母親に初めて相談した。普段は前向きな言葉をかけるタイプの母親が、この時は「できているところは必ずあるから、それだけは見落としちゃいけない」と語りかけた。この言葉が「救いになった」と明かした。
チームメイトの長谷川唯選手の存在も大きな支えだった。「伸び伸びプレーできているのも長谷川さんのおかげ」と感謝を述べた。長谷川選手はシティの戦術を深く理解しており、藤野の状況を客観的に見て具体的なアドバイスをくれた。自身のプレー映像を見せてアドバイスをもらうことも多く、「世界のプレイヤー」から学ぶことは多いという。
この困難な経験を「若いうちで良かった」と前向きに捉えている。メンタルが弱いと感じる自身の性格にとって、この経験は今後の大きな成長につながった。今後のブラジル戦については、過去の対戦経験から「個」で勝負してくるブラジルに対し、自身の個の力(打開力、ドリブル)を活かしたいと語った。流動性といった日本人の良さもチームのストロングポイントとして活かし、シティで得たものとこれまでの代表活動で積み上げてきたものを組み合わせて、勝利にこだわると意気込みを述べた。
(C) SportsPressJP
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