技1つ1つの後の拍手が本当に力になった

全日本選手権最終日のペアのフリーでは、清水咲衣選手と本田ルーカス剛史選手のペア「さえルカ」が、演技中盤のジャンプで清水選手が転倒し、左肩を痛めるアクシデントに見舞われた。清水選手は「ルッツの3連続でこけてしまった際に左手をついて、その時に肩が外れたような感じになってしまった」という。転倒後、演技を一度中断する事態となったが、数秒後に肩が戻ったことを確認し、再開を決意したという。

「戻らなかったら再開すること自体ができない状況だったと思う」と振り返りつつも、清水選手は「ここまで練習してきたので、最後まで滑り切りたいという思いがあった」と述べた。その決断の裏には、強い意志と共にコーチからの励ましもあった。コーチからは「落ち着いて自信を持ってやれば最後までできる」と言葉をかけてもらい、それが大きな支えになったという。

再開後の演技では、左肩への負担が大きいデススパイラルが不安だったが、清水選手は「正直痛みはあったと思うが、滑ってる時は技に集中していたので、それを忘れるくらいとりあえず集中してなんとか最後までやりきった」と語り、本田選手も「途中でやめると思っていた。やめても仕方がない状況だったが、最後まで滑り切れた」と清水選手の努力を称えた。

演技が終わった瞬間、本田選手は「本当に最後までよく頑張った」と声をかけたという。「こういうことも1つの経験として受け止めている。怪我がある中でも大きなミスなく良い演技ができた」とお互いに声をかけ合った。

また、観客の大きな拍手も大きな励みになった。「いや、もう本当になんだろう、再開してから、特にその拍手1つ1つの技の後の拍手で、本当に最後まで滑り切れたと思うので、本当に感謝の気持ちしかないです」と清水選手は感謝の気持ちを述べた。

清水選手は、今年1度肩を外してから不安定な状態が続いていたことが今回の原因ではないかと振り返るが、それでもこの試合に挑む思いは大きかったという。「冬季アジア大会に向けた良い練習になり、この大会がペアとして初出場だったので、特別な舞台に立てたことが本当に光栄だった」と述べた。

本田選手も「このプログラムに含まれている要素はすべて自分たちができるものだけ。できないものは入っていない」と語り、その中で「やり切るためのメンタルや気持ちの持っていき方」をコーチのサポートのもと学ぶことができたと話した。